今回の情報は、課税事業者から免税事業者となる場合の棚卸資産の消費税額の調整についてです。
問題意識としては、課税事業者が翌課税期間から免税事業者となる場合において、当課税期間の期末に保有する棚卸資産については、消費税額の調整を行わなければならないにもかかわらず、うっかり失念してはいないか、というものです。
1. 制度の概要(法36⑤、基通12-6-4)
課税事業者が、免税事業者となる課税期間の直前の課税期間において課税仕入れ等に係る棚卸資産をその直前の課税期間の末日において有しているときは、その有する棚卸資産についての課税仕入れ等の税額は、その直前の課税期間における仕入税額控除の対象にすることはできません。
この点、付表2「課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表」においては、⑬欄「納税義務の免除を受けない(受ける)こととなった場合における消費税額の調整(加算又は減額)額」に記入します。
2. 制度の趣旨
これは、課税事業者が免税事業者となった場合、課税事業者である課税期間中に課税仕入れ等を行った資産で、免税事業者となる課税期間の直前の課税期間の末日において有しているものがあるときに、この課税資産についても仕入税額控除を認めることとすると、
① 課税仕入れ等に係る税の負担がない
② これを譲渡しても課税資産の譲渡等に係る消費税が免除される
③ 継続して免税事業者である者との間で権衡を欠くことになる
ため、棚卸資産に係る調整規定が設けられています。
ただし、課税事業者が免税事業者となる課税期間の直前の課税期間において簡易課税制度の適用を受ける場合には、この調整規定の適用はありません。
3. その他
一方で、免税事業者が、新たに課税事業者となった場合には、免税事業者であった期間中に仕入れた期首棚卸資産に係る消費税額を課税事業者となった課税期間の課税仕入れ等の税額に含めて、控除対象仕入税額の計算を行います(法36①、令54①)。