試験研究費の税額控除については、様々な論点はありますが、中でも、税額控除の対象となる試験研究費の意義と範囲は、一言ではなかなか説明するのが難しい面があります。
そこで、今回の情報では、その概略について、若干の論点整理を試みましたので、今後の参考に願います。
1. 税法上の試験研究費とは
税法上の試験研究費は、その意義や範囲において、会社法や会計基準等において定義される研究開発費等とは、意味合いがかなり異なっています。
そして、試験研究費や研究開発費、あるいは開発費と称される費用等について、税務上、特に重要な論点となるのは、税額控除の適用対象となる「試験研究費」になるか否かです。
この点、措法42の4⑥一及び措令27の4②では、「製品の製造または技術の改良、考案若しくは発明にかかる試験研究のために要する費用」で、次に掲げるものをいうとしています。
①その試験研究を行うために要する原材料費、人件費(専門的知識をもってその試験研究の業務に専ら従事する者に係るものに限る。)および経費
②他の者に委託して試験研究を行う法人(人格のない社団等を含む。)のその委託研究費
③技術研究組合法の技術研究組合から賦課され納付する費用
一方、この税務上の試験研究費に含まれないものとしては、
○事務能率・経営組織の改善に要する費用
○販売技術・方法の改良に要する費用
○販路の開拓に要する費用
○単なる製品のデザインを考案するための費用
○既存製品に対する特定の表示の許可申請のために行うデータ集積等の臨床実験のために要する費用
が挙げられます。
2. 試験研究費と研究開発費との関係
試験研究費と研究開発費との関係に関しては、一般的に、
○税法上の試験研究費は、いわゆる工学的・自然科学的な試験研究を意味しており、販売方法や事務能率の改善や販路の開拓など、人文・社会科学関係の研究費は含まれない
○企業会計の研究開発費には、研究費と開発費という2つの概念が含まれ、このうち開発費は、税務上の試験研究費には含まれないとされています。