今回の情報は、最近の監査を通じて非常に目に付く事項として、内装工事費を「建物」ではなく、「建物附属設備」として処理している事項についてです。
「建物附属設備」に特掲されていない部分
この点、一口に内装工事費と言っても、その内容は様々だと思います。その内容をクライアントに確認した上で、「建物附属設備」に特掲されている部分については、当然、「建物附属設備」とすることに何の問題のないことは言うまでもありません。
しかし、内装工事費のうち、「建物附属設備」に特掲されていない部分については、原則的に、すべて「建物」となります。仮に、取得が本年4月以降であれば、両者とも定額法のみということで、結果的には問題がないといえるかもしれませんが、それ以前の取得分について、建物附属設備として定率法で計算していた場合には、減価償却費が相違するため、結果的に所得金額に影響を及ぼすことになります。
すなわち、新設法人で賃貸マンションに本店所在地を設置するようなケースで、入居に際して支出した内装工事費について、その支出の内容を具体的に確認することもなく、支出金額の全額を「建物附属設備」として経理する、というようなことのないよう、今後は十分留意してください。
なお、今回の論点に関連する事項として、平28.6.14付の監査情報【第14号】を是非参照してください。
以下に、この論点の基本的な考え方を若干整理しますので、参考に願います。
1. 建物と建物附属設備の意義
建物の意義
建物とは、柱、壁、屋根から構成され、外界と隔絶した空間を確保するための構造物で、住宅、店舗、事務所、工場、倉庫等の用に供するためのものです。
この建物には、建物附属設備として独立の償却単位とされていないもので、当該建物と物理的・機能的に一体となったものなどが含まれます。
例えば、工場における温湿度の調整制御、無菌又は無じん空気の汚濁防止、防音、遮光、放射線防御等のために設置された内部造作のようなものは、建物に含まれ、当該建物の耐用年数により減価償却します。
建物附属設備の意義
建物附属設備とは、建物に固着されたもので、その建物の使用価値を増加させるもの又はその建物の維持管理上必要なもので、特に建物から分離して償却すべきものとして耐用年数省令(別表第一)に特掲されたものであり、例えば、電気・水道・ガス・衛生設備や冷暖房通風設備等とされています。
2. 建物の耐用年数
内装工事費が、建物附属設備ではなく、建物に該当する場合に、実際に建物の「構造又は用途」、「細目」をどのように考えるかについては、本来、賃貸物件といえども、当該マンションの構造等で判断するという見方もできます。
しかしながら、賃貸物件については、賃借期間の更新ができず、かつ、有益費の請求又は買取請求をすることができないものは、賃借期間を耐用年数として償却することが認められている(耐通1-1-3)ほか、賃貸契約の期間が更新を前提にしており特段明確でない場合には、経済合理的な方法等により算定した年数を耐用年数とすることも認められ得ると考えます。