少額減価償却資産(法令133、法基通7-1-11)
今回の情報は、少額減価償却資産に関する数ある論点のうち、10万円基準に係るものです。
すなわち、10万円を判定する際の「通常1単位」とは、具体的にどのように考えるのかについて、実際いただいた相談事例を基に、私が多少アレンジしたものをご紹介します。
なお、以下の事例を見る前に、必ず、この論点のベースである法基通7-1-11、若しくは、当該通達の逐条解説を事前にお読みいただくようお願いします。
1. 事例
前提条件は、次のとおり。
- ①広大な工場内で使用する無線機を新たに設置する計画を立案
- ②無線機を設置するためには、最低でも基地局1基と2台の無線機が必要
- ③無線機自体は、1台単位で取引可能
- ④無線機については、事業計画上10台購入予定であったが、予算上の都合から5台(1台当たり5万円)のみ購入
(この5台の無線機購入をAとする) - ⑤購入した基地局1基(60万円)につき、30台の無線機が使用可能
- ⑥新規取得から1年後、予算が確保できたため、無線機のみを新たに10台購入
(この無線機購入をBとする)
基地局自体は、省令別表第一の「器具及び備品」の「電話設備その他の通信機器」に該当することに疑念はないが、A及びBの無線機について税務上どのように処理すべきか?
2. 回答案
《1説》 →A、Bともに一時の損金
無線機については、単体での取得価格が1台当たり5万円と明らかであることから、A、Bともに一時の損金として計上可能である
《2説》 →Aの一部(2台)のみ取得価格に含め、他の3台やBは一時の損金
Aについて、基地局以外に無線機として機能する最小単位である2台のみ取得価格に含める
(事業の用に供することができる最小単位を重視する立場)
《3説》 →Aは取得価格、Bは一時の損金
Aについて、確かに単体での取得金額は10万円未満ではあるが、事業計画ベースでは10台の無線機を購入する予定であったことから、実際に購入したAについては基地局とともにすべて取得価格を構成する
ただし、Bについては、計画外の追加的な取得であり、少額か否かは1台ごとに判定可能であるため、全額を一時の損金に計上できる
《4説》 →AとBの一部(5台)は取得価格に含めるほか、Bの一部(5台)は一時の損金
事業計画を重視する立場からは、当初の事業計画で購入予定の10台までは取得価格に含めるべきであることから、Aのほか、Bのうち当初予算で購入できなかった5台分については取得価格に含める(3説の延長線上の考え方)
《5説》 →A、Bともに取得価格に含める
確かに無線機自体は、通常1単位として取引できる単位ではあるが、もともと基地局がなければ機能しないため、単体で10万円未満であっても少額の減価償却資産には該当せず、したがってA、Bともに取得価格に含める
参考
「通常1単位」に関して、よくある区分としては、次のようなものがあります!
- レンタルビデオは、1本ごと
- 追録式法規集一式は、全巻で
- 新たに設置した電気設備のうち蛍光灯は、全体で
- 賃貸用マンションの各室に取り付けられたカーテンは、部屋ごと
- 組立式商品棚は、一体として使用する目的で設置された単位ごと
- 共同所有している資産は、それぞれの持分に応じて判定