役員給与は、定期同額給与や事前確定届出給与、経済的利益、出向・転籍、ストックオプションなど、法人税法上、留意すべき論点が数多く存在する分野のひとつです。
今回は、役員給与の中でも最も疑義の多い「定期同額給与」について簡単に触れます。
税法上のポイント
役員給与について、まず、前提として十分認識しておくべきことは、法人税法上、役員給与は、原則として損金不算入の立ち位置にいる、ということです。
ここで、改めて、条文を確認してみましょう。
役員給与の損金不算入
法34条
内国法人がその役員に対して支給する給与のうち次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
一.その支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与(定期給与という。)で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与(定期同額給与という。)
今回のテーマ
今回のテーマである定期同額給与や事前確定届出給与等といったものは、一定の要件に該当する場合にのみ損金算入が認められるものといえ、あくまで大原則の例外に該たります。
そういう意味では、個々の要件に該当しない限り損金算入は認められず、特に、定期同額給与の場合には、その判定がかなり厳しいものであることは、皆様方も既にご承知のところです。
役員給与の未払計上について
監査を通じて、最近感じることは、役員給与の未払計上についてです。
定期同額給与として損金算入するためには、
- ①支給時期が1月以下の一定の期間ごと
- ②各支給時期における支給額が同額である
という2つの条件を満たす必要があります(法34①、令69①、基通9-2-11)。
この点、未払計上は、②の条件を満たしませんので、仮に何らかの都合で1月でも未払となれば、0円が定期同額給与のベースとなり、結局、役員給与全額が損金不算入となります。
なお、今回の定期同額給与に限ったことではありませんが、最後に、是非とも申し上げておきたいのは、『定型化した結論に固執しない』、すなわち、ご自身で論点をパターン化し、結論ありきで、十分な事実確認も行うことなく容易に判断しない、ということです。
同様な事例であっても、背景が若干変われば、結論も変わることも少なくありません。クライアントの個々の事情等を十分に聴取・確認し、その中で会計や税法等に絡む事項をわかりやすく説明していくことが重要であると考えます。