今回の情報は、売買目的外有価証券を有する場合の期末時における留意事項についてです。
中小法人が有価証券を有する場合、売買目的有価証券として有することは稀であり、売買目的外有価証券として区分されることがほとんどです。
最近のよくある事例
最近の監査やご質問等でよくお聞きする事項ですが、クライアントが一定の証拠金を支払った上で、売買目的外有価証券に区分される信用取引やデリバティブ取引、あるいはヘッジ取引を行っているものの、決算期末でどのような決算調整を行うべきか、売買回数が多く取引単位も大きいといった面も相俟って、担当者にとっては、かなり悩ましい部分もあるようです。
この点、一義的には、証券会社等に確認するのが、最もスピーディであり、かつ信頼性の高い解決方法といえます。なぜなら、デリバティブ等は、一般に専門性が高く、また、様々な条件等が複雑に絡み合っていることも多く、想像だけで処理すると、後々トラブルの原因となることもあるからです。加えて、証券会社等は、顧客の税務処理を十分認識した上で各種商品を販売しているから、ということもできます。
証券会社等に確認できない場合
仮に、証券会社等に確認できない場合には、税務調査等に備えた若干のリスクは残るものの、既存資料を基に、下記に示す原則的な取扱いに従って処理していただくことになります。いつも申し上げておりますが、契約内容等を現物で再確認しつつ、まずは適正な会計処理を行い、次に税務上の取扱いを確認する、といった流れで進めていきましょう。この点、何の確認等を行うこともなく、過年分と同様の処理を行うということは、当然ですが避けなければなりません。
以下に、売買目的外有価証券等が絡む留意事項を会計面と税務面に区分しつつポイント形式でまとめましたので、今後の参考にしてください。
1. 会計処理
売買目的外有価証券
○期末評価額(法61の3①二、令119の14、令139の2①)
原価法
ただし、償還有価証券(償還期限及び償還金額の定めのある有価証券)の場合には、償却原価法
○時価ヘッジ処理(法61の7①、令121の11)
売買目的外有価証券の価額変動のリスクのため、デリバティブ取引等を行った場合に、
①事業年度終了の時までに間にヘッジ対象である売買目的外有価証券の譲渡がなく、
②ヘッジとして有効であると認められるときは、その売買目的外有価証券の時価と帳簿価額との差額のうち、デリバティブ取引等の利益額又は損失額に対応する部分の金額は、損金の額又は益金の額に算入
(翌期首に洗替え処理が必要)
有価証券の空売り等に係る利益相当額又は損失相当額の益金又は損金算入等
○期末評価額(法61の3①二、令119の14、令139の2①)
原価法
ただし、償還有価証券(償還期限及び償還金額の定めのある有価証券)の場合には、償却原価法
○期末未決済取引の損益(法61の4①)
事業年度終了の時において未決済となっている有価証券の空売り、信用取引、発行日取引又は売買有価証券の取得を目的とする有価証券の引受け(以下「空売り等」という。)については、その事業年度終了の時に決済をしたものとみなして算出した利益の額又は損失の額に相当する金額は、益金の額又は損金の額に算入(翌期首に洗替え処理が必要)
○信用取引等により有価証券を取得した場合の損益等(法61の4③、令119①二十六)
法人が、信用取引及び発行日取引(いずれも買付けに限る)に係る契約により有価証券を取得した場合(繰延ヘッジ処理の適用を受ける場合を除く)には、取得の時に対価として支払った金額と取得の時のその有価証券の時価との差額を、その取得の日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入
(取得した有価証券は時価で取得したものとされる)